再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
「それにしても、紗菜、ほんと昔と全然変わってないな。夢見がちなところも、ぴーちくぱーちく言ってくるところも。あと、それそれ。悔しいと思ってる時に口を尖らせるところとか。昔と変わらず小さいし童顔のままだし、今朝も見た瞬間、すぐ紗菜だってわかった」

「航くんが育ちすぎなだけでしょ? これでも平均身長はあるんだから! それに童顔の何が悪いの! 若く見られるからいいじゃない!」

「別に悪いなんて言ってないだろ? むしろ、変に変わってなくてよかったと思ってるって」


航くんの手が私の頭をぽんぽんとやさしく撫でたかと思えば、次の瞬間、私の頬を軽くつまんだ。


「! ちょっと、航くん何するのっ」

「あぁ、そうそう。このつきたての餅みたいな感触とか、ほんと懐かしすぎるな」

「やだ、やめてよっ」


彼は意地悪に笑いながら、私の頬の弾力を楽しむように何度もつまむ。

昔もよく航くんはこうやって私の頬をつまんでは、嫌がる私を見ながら楽しげに笑っていた。

痛くはないけれど、やめてほしいと訴えるように彼の腕を掴んで引き剥がそうと頑張っていると、ふと航くんから笑みが消え、悲しげな表情が浮かんだ。


「俺は心の底から懐かしい再会を喜んでたっていうのに、紗菜は俺のことはすっかり忘れてたなんて、酷すぎるよな」

「うっ……」

「しかも、“翼、翼”ってうるさいくらい俺に向かって呼んでくれたよな?」

「そ、それはごめんなさい。だって、翼くんと航くんって昔から似てたし、大人になったらこんな感じになるんだろうなって思ったから」


双子とまでは言わないけれど、ふたりは誰が見ても兄弟だとわかるくらい容姿が似ていた。

ただ、性格は真反対と言ってもいいくらいで雰囲気が大きく違っていたから、見分けるのは簡単だった。

私の周りの子たちは、壁を作らず優しくて頼りになる翼くん派と、周りを引っ張るリーダータイプの航くん派で分かれていて、ふたりは陰では名前の下に“王子”をつけて呼ばれていた。

でも、私に言わせれば翼くんは“白王子”、航くんは“黒王子”……いや、私の前での航くんは“黒王様”と呼んだほうがいいと思うくらいの俺様ぶりだったのだ。

航くん派が言っていた“航くんの魅力”というものを私は全く理解できなかったけれど、幼なじみというポジションを羨ましがられていたことに間違いはない。
 
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