再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
全てが終わり、スタッフはチャペルを出ていく。
私はその場から離れたくなくて感動的な式を反芻していると、航くんが話しかけてきた。
「お疲れ」
「あっ、お疲れ様です!」
「どうだった? 茶番は置いておいて、率直な意見を聞かせてくれるか」
「すごく素敵な演出でした!」
「いや、だからそっちじゃなくて」
私の興奮した言葉に対して航くんに呆れた表情が浮かぶけれど、私は気にせず思いの丈を語り続ける。
「空間も本当に素晴らしかったです。ふたりの幸せを包み込むようなあたたかさだけではなく、ふたりのこれからの未来を祝う豪華さもあって……。新郎新婦はもちろんなんですけど、列席者の笑顔も照明にとても映えてました」
「うん」
「素敵な挙式だったなぁ……。あ、でもバージンロードを左右のイスの下から照らす照明が少し強く感じました。ウェディングドレスを足元まで魅せるためだっていうことはわかるんですけど、明るくてレースの豪華さが飛んでいた気がします。もう少し抑えたほうが際立つと思うんです。抑えすぎると次はビジューのきらめきが落ちちゃうから、適度に……」
それからも興奮した想いや気になったところを伝えると、航くんは「わかった。参考にする。必要になったら声かけるから、思う存分堪能しておけ」と言い残して、去っていった。
少しすると照明などの調整の作業に取りかかったようで、航くんや藤岡さんたちの会話が断片的に耳に入ってき始めた。
私の意見はきっと小さなもので、誰もが気づいている部分かもしれない。
それでも、少しでも航くんが関わる仕事の役に立てていたらいいなと思いながら、私は航くんの言葉に甘えて余韻に浸ることにした。
素敵なチャペル。照明。ドレス。笑顔。どれもこれも唯一無二のもの。
将来、私も大好きな人とあんなふうに幸せな笑顔で未来を誓いたい。
現時点ではその日がいつになるかはわからないし、相手が誰になるのかもわからない。
でも、私の頭に浮かぶのはひとりだけ……未来を誓う相手は航くんしか考えられない。