再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
気分よくサラダを口に運んでいると、藤岡さんが笑みをこぼした。
「もう、悪い男に捕まっちゃってるんじゃないの?」
「え?」
「梶原さんと航平、付き合ってるんでしょ? 私の目はごまかせないからね」
「!」
行きの車の中でペンの話をされたとき、私たちの間に何かがあるということはバレているかもしれないと思ったけれど、こんなに直球で言われるとは思わなかった。
認めてしまっていいのかわからず航くんの方をそっと見ると、航くんがあっけらかんと口を開いた。
「誰が悪い男だよ。いい男の間違いだろ。お前も訂正しろよ」
「……あ、うん……。8対2くらいで悪い男ですかね……」
「は? 100%を越えるいい男だろうが」
「だって意地悪だもん」
「やだ! 梶原さん、それ最高!」
「わぁ、サナミとコウヘイは恋人なんだね! そっかぁ! お似合いだね!」
それぞれの反応がありながらも、レオさんの言葉に航くんは「別に普通だろ」と言うだけで、私たちの関係を否定するつもりも隠すつもりもないみたいだ。
瑠花を除いて、会社の人を始め周りには航くんとのことは言っていない。
だから照れくささもあり、それ以上に彼が仲良くしている人の前で私を彼女だと匂わせてくれたことへの嬉しさもあった。
レオさんの言葉にどうしても聞いてみたいことがあって、ウズウズしながら問いかける。
「……あの、レオさん。私と彼、お似合いに見えますか?」
「うん! すごく! ねぇ、ユイ!」
「うん、私もそう思うよ。むしろ、航平が負けてるくらい!」
「……ありがとうございます。嬉しい」
傍から見たときに私と航くんがどんなふうに見えるのか不安に思っていたから、レオさんと藤岡さんに認めてもらえて頬が緩む。
「本当はね、レオがちゃんと来れるかどうかもわからなかったから、梶原さんと航平が新郎新婦役をしたほうがいいんじゃないかって航平にも提案したの。ふたりなら絶対に素敵なものになるって確信してたし。でも、航平ってば断固拒否なんだもの」
「拒否するに決まってるだろ。あれは新婦役の結衣の目線からの確認も必要だったんだから、こいつにさせるわけにはいかなかったんだ」
航くんはぶっきらぼうに答え、デミグラスソースをたっぷり絡めたハンバーグを口に運ぶ。
ゲスト目線だけではなく主役目線でも確認をしていたことに驚いた。
それであれば私ではその役割は果たすことはできない。
その点に関しては腑に落ちるけれど、白木さんは調整が終わった後でもと言ってくれていたから、あのとき拒んだ理由はきっと別にあるはずだ。