再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「でも、私は梶原さんでもあの役割はできてたと思うよ。ほら、梶原さんも調整のときに意見をくれたでしょ? みんなが“目の付け所がいい”って感心してたんだよ」
「そうなんですか?」
「えぇ。特に、足元の照明が少し明るすぎるって言ってくれたところかな。私もそこまでは気づけなかったし、ドレスを細かいところまで綺麗に見せようっていうところは男の人はなかなか気づかないところだから。言われてみれば確かにそうだって、みんな言ってたよ。梶原さんのおかげで、よりよくなったと思う。私たちでも難しいんだけど、空間全体と細かい部分をバランスよく見るセンスがあると思うよ」
まさか誉めてもらえるなんて思わなかった。
私でもちゃんと役に立つことができたんだ……。
「ありがとうございます。お役に立てるか不安だったので、そう言っていただけて嬉しいです」
「航平も梶原さんからの意見を言うとき、得意気にしてたんだよ。ね、航平」
航くんを見ると、否定することなくグラスの水を飲んでいる。
それが彼なりの肯定の仕方だということはわかっているけれど、あえて聞いてみたかった。
「……今のほんと?」
「さぁ。参考にはなったけどな」
「私、少しは役に立てたのかな」
「調子に乗らないなら、認めてやるよ」
「んー。コウヘイって素直じゃないよねー」
「ねー。もっと素直になったら、かわいげもほんの少しは出てくるのに」
首を傾げるようにして顔を見合わせて頷き合う藤岡さんとレオさんがかわいくてたまらないと思いながら、航くんらしい返答に笑ってしまった。
「ありがとう。航くん。これからも力になれるように、もっと頑張るね」
「あぁ。ほら、さっさと食えよ」
「うん」
この話は終わりだと言うように頭に軽く手を乗せられた。
ほんの少し触れてもらえただけで、幸せな気持ちでいっぱいになった。
会話をしている間に男性陣は食べ終わっていて、私と藤岡さんは後少しというところだ。
レトロな雰囲気というだけで選んだボロネーゼはすごくおいしくて、なくなってしまうのが名残惜しいと思いながらフォークに巻きつけて口に運んでいると、レオさんが藤岡さんに耳打ちをして、ふたりで笑い合う様子が視界に入った。
ふたりは羨ましいと思うくらい本当に仲がいい。
微笑ましく思いながら、最後の一口まで味わって食べ終えた。