再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
30分ほどおしゃべりをした後、お会計をして喫茶店から出ると、藤岡さんとレオさんは電車で帰ると言い出した。
レオさんは日本の電車が好きらしく、日本に来たときにはできるだけ乗ることにしているらしい。
最寄の駅まで航くんの車で送ることになり、その車内でもレオさんが盛り上げてくれて短い時間だったけれど楽しく過ごした。
「航平、送ってくれてありがとう」
「いや」
「また会おうね! サナミ!」
「はい。ぜひ」
「じゃあ、サナミとコウヘイ、お幸せにね!」
ドキッとするような発言をレオさんは残し、ふたりは車を降りて寄り添って駅に向かっていった。
ふたりの姿が見えなくなると航くんが息をついた。
「やっと静かになったな」
「うん。でも、にぎやかで楽しかったよ。藤岡さんもレオさんもすごく素敵な人たちだね。機会があったら、またおしゃべりしたいな」
「あの感じならそのうち誘いがくるだろ」
「ほんと? それ嬉しいな」
楽しい時間を過ごせたことに嘘はないけれどやっぱり気を張っていたようで、航くんとふたりになった途端、身体の力が抜けた。
助手席に身を沈ませると、航くんが問いかけてきた。
「疲れたか?」
「うん。楽しかったから、ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな」
「寝ててもいいからゆっくりしてろ」
「ありがとう」
航くんの気遣う言葉とともに、車が再び走り出す。
彼の言葉に甘えてぼんやりと外の景色を眺めていると、今日訪れた建物が見えてきた。
それと同時に今日の興奮を思い出し、私は口を開く。