再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「ふぅん。まぁ、いい。昔のままの素直さに免じて許してやる。でも、もう一生間違えるなよ」
「う、はい」
「紗菜。今度、俺に付き合えよ。俺のことを散々傷つけたんだからな」
「はっ?」
確かに翼くんと間違えてしまったのは事実だし、兄弟と間違えられるのは傷つくものなのかもしれない。
でも、それ以外にいつ私が航くんのことを傷つけたというの?
「これ、お前のスマホだよな?」
「あっ、ちょっと! 勝手に触らないでよ!」
気づいたときには、デスクの上に置いていた私のスマホが航くんの手の中におさまっていた。
取り返そうと手を伸ばすけれど、スマホを持っていない方の航くんの手であっさり捕まえられてしまい、それは叶わない。
「ロック番号……どうせ、誕生日だろ?」
あっという間に航くんはロックを解除し、慣れた手つきで何かを入力した後、私に突き返してきた。
「もう! 何したの!」
「ほら、帰るぞ。送ってやるからさっさと用意しろ」
「ちょっと待ってよ! 航くん、仕事で残ってたんでしょ? 私はひとりで帰るからお気になさらず!」
「仕事ならもうとっくに片づけてる。ほら、ぴーちく言ってないで早くしろよ。廊下にいるから、1分以内に出てこいよ」
「~~っ!」
昔と変わらず強引に話を進めていく航くんは、私に反論させる隙を与えることのないまま、オフィスを出ていってしまった。
そして私は、昔からの習慣を思い出したように身体が動くまま慌てて帰る準備をし、航くんの待つ廊下に出たのだった。