再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
もう一度大きく深呼吸をして、私はゆっくりと口を開く。


「……ね、航くんは私のこと、好き?」


予想外の問いかけだったのか、航くんは目を丸くした。

でもそっぽを向くことはなく、小さく息をついて私の目を見て答えてくれる。


「今さらなこと言うなよ。決まってるだろ。そうじゃないと、こんなふうに一緒にいない」

「うん……。疑ってるわけじゃないんだけどね……」

「……不安がある?」


航くんの指が私の指に絡む。

彼と繋がっているというだけで安心感がぐんと増す。

でも、心がちゃんと繋がっているかはやっぱりまだ不安で、私からも彼の手を握った。


「……うん。あの、変な意味だったり急かしてるとかじゃないんだけど……ずっとね、気になってたことがあるの」

「……何?」


ひとつ深呼吸をして口を開く。


「……どうして、キスよりも先のこと、してくれないの?」


私の言葉に、明らかに航くんが息をのんだ。

驚いただけとは思えないその反応は、彼なりの理由がある証拠だ。


「私に魅力がないから? だから、付き合い始めてから結構経つのに……抱いてくれないの?」


訴えるように繋がっていない方の手で航くんの服を掴み、見つめる。

すると彼の瞳が揺らぎ、「違う」と言ってくれるようにゆっくり首を横に振った。


「大人の魅力がどうこう言ってたのは、もしかしてそれが原因か?」

「……うん」

「……そう。やっぱり不安にさせてたんだな。……ごめん。ごめんな、紗菜」

「航くん……?」


初めて見せる航くんの表情に、違う不安がわき上がる。

どうして彼はこんなにつらそうな顔をして謝るのだろう。
 
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