再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
答えようとしたとき、航くんは表情を緩め、諦めたように力なく笑みを浮かべる。
「……悪い。こんな言い方ずるいよな。無理しなくてもいい。……別れたいなら、それでも」
「待ってよ。航くんが勝手に答えを出さないで。私の言い分を聞かないなんて、それこそ自分勝手すぎるよ」
「……そうだな。わかった」
気持ちを落ち着かせるように息をついた彼の頬を、私は両手で包み込む。
「航くん」
「……あぁ」
「私、言えるよ。私は航くんから絶対に離れない。航くんと一緒にいられればそれでいいの。ふたりで抱きしめ合って、たくさんキスをして、たくさん言い合いをしてケンカして……そうやって航くんと一緒にいるだけで幸せだよ。子どもがいなくても、ふたりで幸せになる方法はたくさんある。それは夢を諦めるわけじゃないし、ただ肌を合わせていれば満たされる自信もあるよ。……私は航くんのことが好きなの。航くんのことがすごく大切なの。航くんとずっと一緒にいることが今の私の夢だよ。だから一緒に叶えてほしいよ」
「……紗菜」
「航くんが好きなの。好き……っ」
つらい気持ちもあるけれど、航くんが弱いところを見せてくれたことが嬉しかった。
言葉だけでは言い表せなくて彼を抱きしめる。
いつもは彼に包み込まれるように抱きしめられるけれど、今は私が彼を支えたいと思った。
「……紗菜、本当にいいのか?」
「何を言ってるの。当たり前でしょ。誰に何を言われようと、私はこれからも航くんと一緒にいるんだから」
航くんを抱きしめる力を強くすると、彼の腕がためらうように私の身体を包み込んだ。
「ごめんな、ごめん」
「やだ。ありがとうって言ってよ。ごめんだなんて、航くんらしくない」
さっき言われたことを返すと、航くんから小さく笑みがこぼれた気がした。
「……確かにそうだな。……紗菜。ありがとう」
「うん、それでよし!」
航くんを抱きしめたままクスクス笑っていると、航くんの身体に入っていた力が少し抜けたように感じた。