再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「紗菜」
「うん」
航くんの手が私の身体を離し、私たちは額を合わせて見つめ合う。
いつもよりも彼の瞳が濡れているように感じるのは気のせいではないと思う。
きっと、それは私も同じだ。
「……愛してる、紗菜」
「……うん。私も航くんのこと、愛してるよ。……って、照れ臭いね」
「もう言わないからな」
「え、たまには言ってよ」
「考えとく」
お互いに微笑み合った後、どちらともなく唇を触れ合わせる。
今までも愛情をたくさん伝え合っていたけれど、その中でも一番、愛を感じるキス。
私たちは大丈夫だと、ふたりで誓い合うようなキスだった。
長いキスの後、私たちは指を絡めて手を繋ぎ、寄り添うようにソファーに座っていた。
航くんがぽつりと話し始める。
「白木さんにモデルを提案されたとき、紗菜には早いって言った本当の理由なんだけど」
「うん」
「俺は紗菜が小さい頃から夢見てきたことを、仕事じゃなくてちゃんとした形で叶えてやりたいと思ってる。それはまだ、今日じゃない。だから、着せたくなかった」
「……うん」
「ウェディングドレスは俺が着させてやるから、もう少し待ってろ。これから先、紗菜の夢はできる限り俺が叶えていく。……これが俺の夢なんだ」
私に絡まった航くんの指に、決意を示すように力がこもる。
そんなふうに思っていてくれていたんだ……。
頑なな態度に不安しかなかったけれど、真実を知れば嬉しくてたまらない。