再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
2.黒王子が私を振り回してくる件。
01
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カーテンの隙間から漏れる朝日を浴び、身体にだるさを感じながら眠りから覚めた。
今日も昨日と同じで、いい天気のようだ。
身体を起こし寝惚け眼のまま、どうしてこんなに憂鬱な気分なのかを考える。
すぐに、昨日の夜は考えごとをしていてよく眠れなかったからだと思い出した。
「……夢、じゃないよね……」
昨日、10年ぶりに再会した幼なじみの顔が頭に浮かぶ。
私の記憶ではそれは私が大好きだった初恋の人ではなく、初恋の人とよく似ている男の顔だ。
一瞬だけ本当は初恋の人と再会できたのではないかという希望を持ってみたけれど、昨日のことを思い出せば思い出すほどその希望は薄れていく。
思わずため息が出た。
――あの後、航くんは本当に私を車で送ってくれた。
相手は航くんだとはいえ、さすがにマンションまで送ってもらうのは悪い気がして駅まででいいと遠慮した。
にも関わらず、彼は私の住所をなんだかんだと理由をつけて聞き出し、私の住むマンションまで車を走らせた。
住んでいる場所を知られたからといって何かが起こるわけではないし、航くんの俺様で強引なところは相変わらずだということもあって、私は諦めておとなしく送ってもらうことにしたのだ。
もしこの再会が翼くんだったら、すごく紳士に私に接してくれただろうなと想像する。
大人になった翼くんはどんな素敵な男性になっているのかな。
仕方ないので航くんの姿を浮かべ、優しく笑いかけてくれる10年前の翼くんの表情を重ねる。
想像しただけでもやっぱり素敵すぎる!と悶えそうになったとき、ハッと我に返り時計を見た。
「やだ! 遅刻する!」
時計はいつも家を出る10分前を差していて、私は慌てて仕事に行く準備を始めた。