再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
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カフェを出てランチを食べた後、少し足を伸ばしてレトロな建築物や店がある街に行ってみようということになり、車でドライブしながら向かった。
レトロ地区へ到着した私たちは、街の光景を楽しんだりショッピングをしたりと、日が傾く頃まで楽しい時間を過ごした。
そして帰る前に、ドライブ中にチェックしていたレトロ地区のそばにある港を訪れた。
そこには海を展望できる場所があり、私と航くんは寄り添うようにして柵のそばから街と海と夕日を眺める。
西日はまだ暑さを地上にもたらすけれど、薄く浮かぶ雲や空をグラデーションに染めていて、海もきらめき、吸い込まれそうなほど見とれてしまう。
「綺麗だね」
「あぁ」
航くんに触れたくなってわずかに手を動かしたとき、航くんから私の指に絡ませるように手を繋いできた。
航くんも同じ気持ちだったんだと思えば嬉しくて、彼の肩に軽く寄りかかった。
本当にすごく幸せだと思ったとき、ふと朝の会話を思い出す。
「あっ、そうだ。翼くんに会っても後悔するなって航くん言ってたけど、なんのことだったの?」
「……別に」
「え、ウソ。何か理由があるんだよね? 教えてよ」
繋がった手を揺らして何度か懇願すると、航くんは諦めたように息をついて口を開く。
「翼が結婚してるって知ったら、紗菜がショックを受けると思っただけ」
思わぬ理由に、一瞬言葉が出なかった。
「やだ、どうしてそうなるの? ショックなんて受けないよ。翼くんが愛する人と家族になって子どももいて、幸せそうな顔しててすごく嬉しかったよ」
「あっそ。それならいいけど」
息をついた航くんはそれ以上何も言わず、海に目線を移してしまう。
どうしてそんなふうに思ったんだろう……。
航くんはたまに翼くんにヤキモチを焼いたり気にすることがあるけれど……もしかして、翼くんに会うことで私の気持ちが変わってしまうかもしれないって心の片隅で思ってたのかな……?
だから翼くんが結婚していることに対してショックを受けてしまうって……?
そういうのはきっと相手を信じるとか信じていないとかの問題ではなく、無意識に感じてしまうものだろう。
もし私が航くんの立場であれば、同じように不安になっていたはずだ。
今まで航くんが翼くんのことを気にするような言葉を言っていたのも、きっと私を想う気持ちから出たものだ……。