再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
航くんをちゃんと安心させたくて、指が絡む手に軽く力を込める。
「私ね、幸せそうな翼くんの話を聞きながら、私の未来はどんなものになるのかなって想像してたの。想像の中の私の未来には、今一番大切に思ってる大好きな人がいる。きっと楽しいことばかりじゃないと思うしケンカもたくさんするんだろうけど、それ以上にたくさん笑い合える未来になるといいなって思ってるんだよ」
「ふーん。そう」
航くんは興味なさそうに相づちを打った後、手に力をこめた。
そのとき、翼くんが「紗菜ちゃんの口から出た言葉をどうやったら実現できるか、って考えてるんだよ」と言っていたことが頭をよぎった。
航くんは今この瞬間も、私との未来をどう描いていくかを考えてくれているのかな……。
彼は口に出してくれないから真実はわからないけれど、そうだったらいいなと思う。
彼と同じ未来が訪れることを、私は綺麗な夕日に祈る。
「紗菜」
「うん? ん」
名前を呼ばれ視線を夕日から航くんに向けようとしたとき、影が落ちてきて唇に彼のやわらかいぬくもりが触れた。
唇を啄むようにして、彼は離れていく。
「紗菜の想いは必ず叶う。叶えてやるから、俺のそばにいろ」
「……うん。あっ、でも、ひとつだけいい?」
「ん?」
「私も一緒に叶えていきたいから、この手を離さないでね。翼くんの真似っこになっちゃうけど、住む家の設計なんかもふたりでしたいなぁ」
ふたりでいるのだから航くんだけに任せるのではなく、私も一緒に歩いていきたい。
そんな想いを彼に伝えるのが初めてだったからか、彼は一瞬間を置いた後、ふといつもの意地悪な笑みをこぼした。
「夢でかすぎだな」
「ふたりで叶えていけば何も怖いものはないでしょ? 夢は大きいほうがいろいろ楽しいし!」
「別にいいけど、振り落とされんなよ。のろま紗菜」
「あっ、ひどい! こういうときは“君の歩幅に合わせるから、一緒に歩いていこうね”って優しい言葉をかけるものでしょ?」
「アホか。短足の紗菜の歩幅に合わせたら3倍時間がかかるだろ。待てるか。俺にしっかりついてこいよ」
「短足なんてひどい! 航くんが無駄に長すぎるだけでしょ! もうっ……ふふふっ」
少し真剣な話をしたと思えば、すぐにまたこうやって笑い合える。
そんなふうに言い合いをするのもすごく楽しくて、何よりも心地よくて大好きな時間。
私たちは身体を寄り添わせて何気ない話をしながら、夕日が沈むのを見送った。