再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
02
***
企画営業部に異動になって4日目の木曜日。
月曜日から行っている作業はまだ仕分けの段階だ。
というのも一昨日の午後からは航くんから依頼された資料のプリントアウトや冊子作りなどの作業の手伝いをしていたからで、仕分け作業自体のペースは上がり、調子が出てきた。
今日の夕方頃には製本作業に入ることができそうな段階まできている。
終わりが見えてくるのと同時に、資料の内容を早く確認したいという気持ちも強くなった。
少しでも作業を進めるために今日もデスクでランチをしようと、朝家を早く出てバス停の近くにあるお気に入りのお店でパンを買ってきた。
準備は完璧だ。
昼になると、瑠花は昨日までと同じようにランチに誘ってくれた。
でも申し訳なく思いながら、私はまた今度行こうと断った。
瑠花が去った後、パンの袋を開けようとすると横から航くんの手が伸びてきた。
パンの袋を掴み、奪い取られる。
「えっ、何……なんですか?」
「悪いけど、時間ないからちょうだい」
「いや、私も時間が惜しいんです。返してください」
手を伸ばして返してもらおうとするけれど、航くんは私からパンを遠ざけた。
「お前が30分やそこら作業したって、何も変わらないだろ。これは俺が食っておいてやるから、光石さんと飯食ってこい」
「ちょっと……」
「ほら、さっさと行けよ。置いていかれてもいいのか?」
航くんは心の底から私を邪魔だというように、手を払うように動かす。
そして、私が食べるはずだったパンの袋を小気味いい音をたてて開け、パソコンのディスプレイに向かったままかぶりついた。
そんな彼のことを呆然と目に映していると、怒りが湧き上がってきた。
ほんと、なんなの? 昔と変わらず俺様で意地悪なことばかりしてくる。
昨日は航くんとのやり取りが懐かしくて、振り回されながらもちょっとだけ楽しいかもしれないと思ったけれど、そんな気持ちはもうすっかりどこかに行ってしまった。
「お昼行ってきます!」
イラつきをぶつけるように航くんに向かって言い捨て、私は財布を掴んでオフィスを出た。