再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
早足でエレベーターホールに向かうと、瑠花の姿を見つけた。間に合ったようだ。
イラつきが酷すぎて、瑠花に話を聞いてほしいとお願いすると、快くOKしてくれた。
ランチは会社から徒歩5分の場所にある隠れ家的な定食屋で取ることに決めた。
会社から近いこともあり、うちの社員もよく利用している。
この定食屋はうちの会社の社員が照明プランを立ててリノベーションしたお店で、木の枝を組んで作られた照明はお店の雰囲気とも合っている。
木のぬくもりを感じることのできるとても素敵な空間で、大好きな店のひとつだ。
私はしょうが焼き定食、瑠花は焼肉定食という、お世辞でもオシャレなOLとは言えないメニューを頼み、美味しくいただきながらおしゃべりをする。
「やだ! 紗菜美と瀬戸さんって、そんな親密な関係だったの!?」
航くんが幼なじみということや再会してからの出来事を瑠花に伝えると、そんな反応が返ってきた。
意味深に聞こえるような言葉に、私は焦る。
「ちょっと! そんな大声で変な言い方しないで! 親密なんかじゃないから!」
「間違いじゃないでしょ?」
「間違いだらけだよ! 初恋の人だと思ってたの。ロマンチックな再会をしちゃった!ってドキドキしてたの! なのに、まさか再会したのが、率先して私に意地悪してた幼なじみなんてオチ、酷くない!?」
「いいじゃない。瀬戸さんってあれだけイケメンで仕事もできるし、リーダータイプってことはぐいぐい引っ張っていく男ってことでしょ? 私は素敵だと思うよ」
昔、私の周りの女の子たちがよく言っていたような言葉に、私は首を横に振って否定する。
「瑠花は航く……瀬戸さんの本性を見たことがないからそんなこと言えるんだよ」
「何されたの」
「初恋の人にバレンタインのチョコレート持って行ったら奪われて食べられちゃったり、同じクラスの男の子とおしゃべりしてたら無理矢理引っ張って行かれて荷物運びを手伝わされたり! 他にもいろいろ! 私にだけそんな嫌がらせみたいなことしてくるの!」
「うん。それで?」
「仕事だから仕方ないけど、英語の資料の片づけをどっさり任せられてアップアップしてるし、一昨日残業してるところに現れたと思ったら私をどん底に突き落とすような宣告してくるし! さっきだって、仕事しながら昼ごはんに食べようと思ってたパンを奪われたんだよ! わざわざ朝早めに家を出て並んでまで買ってきたお気に入りのパンなのに、私が30分やそこら仕事したって無駄だから、瑠花とランチしてこいって無理やり! 優しさのかけらなんかこれっぽっちもないの! 初恋の人じゃなくても、せめて素敵な人と出逢いたかった!」
瑠花はサラダを口に運んだり相づちを打ったりしながら、息継ぎをするのを忘れてしまうくらい溢れだしてくる私の愚痴を聞いてくれた。