再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
想いを吐き出し終えて息を整えていると、瑠花は涼しい顔で口を開く。
「うーん、話を聞く限り瀬戸さんの本性なんてかわいいものだと思うけど」
「かわいいってどこが!?」
「今の紗菜美にはわからないだろうけどね。まぁとりあえず、まずは紗菜美のそのロマンチスト体質はそろそろ卒業した方がいいんじゃない? 私たちもうアラサーに突入するんだし、夢見てばかりじゃいられないって。その初恋の人みたいに優しくて大人な白馬の王子様なんて、黙って待ってても来ないんだし、そもそも簡単にいないよ。もしいても、紗菜美が空想を繰り広げてる間にとっくに売れてるからね」
「瑠花まで私の夢を否定しないでよ! っていうか、私はちゃんと自分を守ってくれるような人と運命的な出逢いを遂げるときを見逃さないように、目を光らせてるの!」
「はいはい。わかりました」
私がこの話をすると、瑠花はいつもこんなふうに頷く。
目の前の肉に箸を伸ばしておいしそうに口に運んでいく瑠花は、既婚者だ。
相手は同じ企画営業部のクールイケメンエース様の川崎(かわさき)さんで、瑠花は会社では旧姓の“光石”を名乗っている。
夢を語ったり理想を掲げたりしていなくてもしっかりいい男を捕まえる辺り、瑠花はしっかりしまくっているのだ。
「どこかではちゃんとわかってるの。夢みたいなことばかり言ってても現実になるわけじゃないんだって。でも、夢見ていたいの」
「もしかして紗菜美、元カレのことまだ気にしてるの? だから踏み出せないんじゃないの?」
「……別に、そんなんじゃないけど……」
元カレの話を出されて口をつぐんでしまう。