再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
オフィスに戻ると、航くんはデスクにいなかった。
ホワイトボードを見ると外出したようで、私のデスクにも急な外出が入ったという伝言メモが残されてあった。
「時間がない」と言っていたのは本当だったらしい。
それならあんなふうに奪うようなことをせずに、ちゃんと理由を言ってくれればよかったのに……。
航くんって変なところで不器用だよなと呆れている間に、午後の業務が始まった。
午前に引き続き、資料の仕分け作業を進めていく。
1時間ほどが経った頃、見積書を作成するから手伝ってみないかと瑠花に声をかけられた。
航くんは着実に国内での案件を進めていて、近いうちに見積書の作成を依頼されるだろうと思い、瑠花に今週のどこかで一旦作業内容を教えてほしいとお願いしていた。
頼まれてから慌てて教えてもらうよりも、あらかじめ流れを見ておいたほうがいいと思ったのだ。
早速教えてもらうと数量や金額の確認といった気を遣う作業があったり、品番が紛らわしかったりと、想像以上にしっかり気を引き締めて行う必要がありそうだと感じた。
品番に関しては総務部にいた頃の経験があるため慣れてはいるものの、気を遣うところなのは同じだ。
瑠花に指示してもらいながら、ペースは遅いながらも作業を終えた。
発注の仕方についても近いうちに教えてくれるという瑠花にお礼を言い、私は再び自分の作業に戻った。
新しいことをすると時間があっという間に過ぎ去っていく。
もうすぐ定時になるというとき、仕分け作業もようやく終わりが見えた。
まだ全ての内容は見ていないけれど、ここまで資料の仕分けを行ってきて感じたのは、航くんは部長や瑠花の話の通り、仕事ができる人のようだということ。
資料にはたくさんの走り書きのメモがあり、内容は理解できなくても仕事への想いと熱さを感じた。
昔から頭も要領もよくて学年トップ争いの中にいつもいたし高校も県内でトップの学校に合格していたけれど、飄々として見えて意外と努力家タイプでもあるのかもしれない。
そういえば、航くんはどうしてこの仕事をしたいと思ったのかな……。
モノを作るのが好きというタイプでもなかった気がするし、こういったクリエイティブな仕事につくのは意外だ。