再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
そんなことを考えながら資料を揃えていると、案件名の中のBOOKという単語が目に留まった。

本屋の改装かなと資料をめくると、大型の本屋の照明プランと完成イメージが書かれてあった。

私はまだほとんど図面を読めないので、頭の中でイメージを膨らませることができない。

実際の写真が見てみたくなり、施工例が上がっていないか就職活動以来ほとんど見たことのなかった自社ホームページを開く。

すると、写真があった。

……何、これ……。本当にあの航くんがプランをたてたの……?

本屋の機能をしっかり備えながら、照明やオブジェをうまく組み合わせて空間を作り上げている。

その照明は無機質な白ではなく、あたたかみのあるものだ。

本を選んだり読んだりするのに優しい明るさで、1日ゆったりと過ごせそうな雰囲気が写真からも伝わってきた。


「写真まで探し出すほど、それ気に入った?」

「こ……、瀬戸さん!」

「お疲れ様」

「お疲れ様です」


写真に夢中になるあまり、航くんが戻ってきたことに気づかず過剰に驚いてしまった。

自分を落ち着かせるように私は胸に手をあてる。


「定時過ぎてるのに、ずいぶん熱心だな」

「え? あれ、いつの間に……」


辺りを見渡すと同僚の姿はまばらになっていて、そのことに気づかないほど私は夢中になっていたらしい。
 
< 32 / 196 >

この作品をシェア

pagetop