再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
03
***
部署を異動してから最初の1週間が無事に終わった。
初日から怒涛すぎたけれど、ようやくゆっくり過ごすことができる。
期待いっぱいに土曜日の朝を迎えた私は、スマホの着信音で目を覚ました。
……そして今、なぜか、航くんの運転する車に乗っている。
「……なんなの。なんで休日に航くんに呼び出されなきゃいけないの! 今日はゆっくり過ごそうと思ってたのに! 土曜日は空けとけって、このためだったの!?」
「きーきー、うるさい。マンションまで迎えに行ってやっただろうが。どうせダラダラ寝て飯も食ってないだろうと思って、紗菜が好きなパンも買ってきてやったんだ。文句言うな」
「航くんが勝手に来たんでしょ!? っていうか、ほんとどこに行くの!」
「……」
「もうっ、いい加減、黙秘はやめてよ!」
車を運転する航くんに噛みついた瞬間、助手席に座る私のお腹が車内に鳴り響いた。
「ほらみろ、腹減ってんだろ? 黙ってさっさとパン食え」
「……もうっ」
朝ごはんを食べる時間はなかったし、航くんに抗議して余計な体力を使ったせいもあって、お腹がすいているのは確かだ。
私は航くんに渡されたパンを袋から取りだし、「いただきます!」と言ってかぶりつく。
……美味しい。
「ミルクティーもそこにあるから、飲んで。ちょっと冷めたと思うけど、猫舌の紗菜にちょうどいい温度になってるだろ」
「……ありがと」
「いいえ」
一瞬こぼれた航くんの笑みに、私は口を小さく尖らせた。
航くんは意地悪をしたかと思えば、ふと見直すようなことをしてくる。
彼と再会して1週間を過ごしてきて、昔の航くんとは変わった部分をこうやって垣間見ることがある。
大人になったということなのかな……。
とはいっても、強引すぎるところはやっぱり直してほしいものだけど……。