再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
……ほんの30分前まで、私は気持ちよく二度寝をしていた。
そこに1本の電話がかかってきたことから、このよくわからない状況は始まった。
いつの間にか私のスマホにアドレス登録されていた航くんからの電話で、「10分待ってやるから、着替えて外に出てこい」とただそれだけを言い残し、電話を切られた。
何かの冗談かと思って外を見てみると、つい先日私をマンションまで送ってくれた見覚えのある車がパーキングに止まっていた。
一度電話を掛け直したけれど航くんは出てくれなかったから電話するのを諦めて、慌てて用意をして外に出たというわけなのだ。
もちろん10分で用意ができるわけもなく10分遅刻して行くと、航くんに「化粧しようがすっぴんだろうがどうせ変わらないだろ。無駄な時間を使うな」という世の中のオトナ女子を敵に回すような発言をされ、怒ったことは言うまでもない。
この前は仕事と真剣に向き合っている航くんのことを見直したけれど、やっぱり根本は昔と変わらずただの俺様だ。
とはいえ、きっと気まぐれだろうけど、私の大好きなパンとミルクティーを買ってきてくれたから許してあげよう。
パンを食べ終えミルクティーを飲みながらしばらく航くんと他愛もない会話をしていると、目の前にある光景が広がった。
それは太陽の光を反射させてキラキラと輝く海だ。
「わ、海だ! 綺麗!」
「あぁ、ほんと。綺麗だな」
「すごーい! 海見るの、久しぶりだよ~」
久しぶりに見る海に、珍しいものでもないのにテンションが上がる。
航くんも運転しながら視界の端に映しているようで、私と同じように気持ちが高揚しているのか、いつもよりも声のトーンが少し高い。