再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
一気に楽しい気分になったのと同時に、ふと頭の中に昔の記憶が蘇ってくる。
懐かしい夏の記憶だ。
「そういえば、航くんって昔泳げなかったよね。私がプールで足を取られちゃって溺れそうになったときも助けてくれたのは翼くんだったし。今もそうなの?」
「いつの話だよ。あれは翼のほうが紗菜に近かっただけだし、泳げるに決まってるだろ」
「ほんとに? あの後、航くんも翼くんに助けてもらってたこと、私覚えてるよ」
すごく怖くて恥ずかしい思いをしたけれど、なんでもできると思っていた航くんが自分と同じように助けられたことで、笑うことができた記憶がある。
翼くんがいなければ笑い話にもならなかっただろうけど。
「余計なことだけは覚えてるよな。今はちゃんと泳げるから。言っておくけど俺、高校は水泳部だからな。インターハイで決勝まで行ったことだってあるし、リレーでもアンカーを務めてたんだからな」
「嘘、あんなに泳げなかったのに?」
「そんなに疑うなら今度泳ぎに行くか?」
「え、やだよ。水着もないし、なんで航くんと泳ぎに行かなきゃいけないの」
「当然デートだろ? 紗菜が溺れたらちゃんと助けてやるから安心しろ。水着なら俺が選んでやる」
「だからなんで航くんとデートしなきゃいけないの。私の水着を航くんが選ぶ理由も全くわかんない……わ、埠頭に教会があるよ! 素敵!」
対象を変えてはしゃぎ始めた私に呆れたのか、航くんは「まったく」と息をつき、意外にも丁寧なハンドルさばきで車を走らせた。