再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
建物に入ってから約1時間。
なぜかウェディングプランナーにいろいろな話を聞かされ、気づけば私と航くんは他のカップルに混ざって、チャペルの列席者の席にいた。
どうやら、私が参加させられているのはブライダルフェアらしい。
今は相手はいないとは言え、ブライダルフェアに興味はあるしプランナーの話も楽しいけれど、どうして私が航くんとこんな場所にいるのか状況はやっぱりまだわからないままだ。
「……模擬挙式ってこんなに本格的なんだね……すごい」
「そうだな。紗菜も俺との将来のためにしっかり見学しろよ」
「はぁ? むぐっ」
「大声出すなよ。この神聖な場所でケンカはしたくない。頼むから黙って付き合って」
「~~っ」
私の口を塞いだ手で「しーっ」と子どもを静かにさせるように、航くんは自分の口元に人差し指を立ててジェスチャーする。
確かにここはケンカをするような場所ではない。
幸せで溢れるべき場所……永遠の愛を誓う場所だ。
でも、どうして航くんはこんな素敵な場所に私を連れてきたの?
「俺との将来のために」って、まさか本当に結婚を考えてるわけじゃ……って、そんなわけないない! どうせお得意の冗談だ!
とはいえ、バカな冗談を言うためだけにブライダルフェアに来るとは思えないし、何かしら理由はあるはずなんだけどなぁ……。
航くんはゆるりと辺りを見渡して空間を楽しんでいるようだった。
航くんが何を考えているのか全くわからなくて、私はただ黙ってそこに座っているしかなかった。