再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
車に乗り込むと、航くんは先ほど来た道を引き返し始めた。
教会から5分ほど走らせた場所にオムライス専門店があり、そこでランチをとることにした。
店に入るとランチの時間から少し遅めだったからか待ち時間はほぼなく、目の前に海を眺めることができるカウンター席に通された。
竜也と再会したときの苦しい思いが残りながらも、それを振り払うように目に映る綺麗な景色にはしゃいでいると、航くんが呆れたようにメニューを差し出してくる。
「ほら、騒ぐ前に注文しろよ」
「あっ、うん。どれにしようかな」
「これがうまいからこれにしろ。お前の嫌いなマッシュルームも入ってないから」
悩み始めようとするとすぐに、航くんがメニューにある“とろとろ卵のオムライス”を指差し、店員を呼んだ。
「えっ、選択肢なしなの?」
「俺を信じてろって」
「ちょっと」
航くんは私の呼びかけを無視し、やってきた店員にメニューを見せながらスマートに注文する。
その光景に頬を膨らませながらも、料理はどれもおいしそうだからいいかとそれ以上は何も言わず、私はキラキラと輝く景色に視線を向けた。
しばらくすると熱々の湯気があがるオムライスが運ばれてきて、私たちは「いただきます」と少し遅いランチにたどり着いた。
口に運ぶと、航くんの言う通り本当に絶品で、私は思わず声を上げる。
「おいしい!」
「だろ? この店、桜ノ宮にもあって海外に行く前にもたまに行ってたんだ」
「えっ、外出の合間にこんなにおいしいもの食べてるってこと? ズルイ!」
「はいはい。今度また連れて行ってやるから、まずは今を堪能しろ」
「うん!」
私は食欲のまま、トマト感たっぷりのケチャップソースがかかったオムライスを頬張る。
その美味しさに感動しながら、私は夢中になって次々と口に運んだ。
気づけば竜也のことも頭の中から出ていっていた。