再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「このお店、本当に素敵だね。あっ、ここって夕日が沈むところ、見れるのかな?」
「見えるんじゃないか? 海の方、西だし」
「ほんと? きっとすごく綺麗だろうな。海の向こうに沈む夕日を好きな人と寄り添って見れたら、ロマンチックだと思わない? 憧れるなぁ」
そんなロマンチックな状況でキスなんかされちゃったら、心臓が爆発しちゃうかもしれない。
そんな妄想を繰り広げると、幸せな気持ちになって頬が緩んだ。
「ふーん。それは幸せな思考だな」
「どうせまた夢見がちってバカにするんでしょ? 別にいいよ。考えるだけで幸せになれるんだから、私はそれで十分なの」
「あっそ」
私の話に全く興味を持ってくれない航くんは私よりも早くオムライスを平らげ、視線を海に向けた。
航くんは昔からロマンチックなことには一切興味がないらしく、私の話に対して同意してくれたことはほとんどない。
興味がないことをばっさりと切る性格はある意味清々しいけれど、会話をしているのだから、少しくらい共感してくれてもいいのにと思ってしまう。
翼くんや竜也であれば、きっと笑顔で「叶うといいね」と頷いてくれるはずだ。
……って、どうして竜也のこと思い出したの。
竜也は結局、「夢物語を聞かされるのは面倒だ」と言って私をふったのに……。
当時の感情と胸の痛みが蘇ってきて、それを追い出すように私は小さく息をついた。
今は目の前にある景色とオムライスの味を堪能して幸せな気持ちになろうと視線を動かしたとき、近くの席に座っていた女性客と目が合った。
でもその女性はすぐに、私から視線をそらしてしまう。