再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
実は、店に入ったときからこういった視線が飛んできていることには気づいていた。
その視線は全て女性のもので、主に航くんに向けられたものだ。
そして、どうやら私たちの関係を勘違いされているようで、一緒にいる私に対しても好奇心の視線が痛いくらいに向けられている。
これが翼くんとだったら喜んで視線も受け止めるけれど、相手は航くんだしちょっと遠慮したい。
たしかに航くんは黙っていればカッコいいとは思うけど、優しさが足りないんだよなぁ……。
彼の横顔を見ながらそんなことを考えていると、ふとその視線が私を向いた。
思わず小さく肩を震わせたとき、彼の手が私に向かって伸びてくる。
「子どもかよ。ついてる」
「っ!?」
航くんの親指が私の唇を拭う。
百歩譲って、そこまではまだよかった。
でも次の瞬間、彼はその指を自分の口元に運び、赤い舌で舐め取った。
「なっ……」
まさかそんな行動をするとは思わなくて、驚いて声を上げるのと同時に、背後からも黄色い声が聞こえた。
航くんはその声に対してなんの反応もせず、いつものように私に言葉をかけてくる。
「ほら、早く食えよ。次があるんだから」
「えっ、まだどこかに行くの? っていうか、そもそもどうしてブライダルフェアに行ったの? いい加減教えてよ」
素敵な空間に行けたことは正直楽しかったけれど、行かなければ竜也に会うことも空しい思いもすることもなかった。
何よりも航くんが何を企んでいるのかが気になる。
「そのうちわかるから、楽しみにしてろって。ほら、ぴーちく言ってないで早く食えよ。今日はおごってやるから、ちゃんと味わえよ」
「そのうちっていつ? 誤魔化さないで、ちゃんと教えてよ」
「……」
「もう!」
私の言葉を無視して水を飲む航くんはやっぱり何も答えてくれない。
こうなってしまえば、押しても引いても彼が口を開かないのは昔からだ。
私は仕方なく聞くのを諦め、視線を気にすることもやめてオムライスを食べることに専念した。
私の分はセットになっていたのか、オムライスを食べ終わるのと同時にデザートのプリンが出てきた。
自家製らしく、カラメルソースの香ばしさとカスタードの甘さのバランスがちょうどよくて、すごくおいしかった。