再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 

お腹いっぱいになって満足した私たちは、再び車に乗り込み移動を始めた。

次に訪れた場所も、全く想像していない場所だった。

人が溢れるひんやりした空間を見渡しながら、私は口をあんぐりと開けて歩く。


「わ、すごい、綺麗……」


ここは夏前になるとよく話題になるアートアクアリウムだ。

テレビでその光景を見かけるたびに一度は行ってみたいと思っていたけれど、一緒に行く相手もいなくて来たことはなかった。

赤や白、黒や金といった色鮮やかな金魚たちが美しい水槽の中を優雅に泳ぎまわっている。

水槽のデザインはもちろんのこと、空間や水槽を灯すライティングがまた美しい。

目に映るすべてが新鮮で、テレビで観るよりも圧倒されるくらいに綺麗で幻想的だ。


「やっぱり来て正解だったな。こんなの、日本でしか見れない」


私も空間の素晴らしさに気持ちが高揚しているけれど、航くんはそれ以上にこの空間に魅了されているようだった。

もしかして、航くん自身が来たかったのかな。

彼は私の存在をすっかり忘れてしまったように楽しげに独り言を言いながら、人波の中をじっくりと空間を見ながら進んでいく。

航くんの口から出てくるのは「このライティングはあの案件に活用できそう」だとか「俺だったらここはこうライティングする」だとか、プライベートのはずなのに仕事に関する言葉ばかりだ。

そのとき、先日彼が話していた仕事に対する考え方をふと思い出した。

……そっか、航くんが仕事に真剣なのは灯りや空間作りが純粋に好きだからなんだ。

航くんは心から好きだと思えることを仕事にしているんだと気づけば不思議と嬉しい気持ちになり、幼なじみとして、そして仕事仲間として彼の力になりたいと私は素直に思った。
 
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