再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「は? 勝手に決めつけるなよ。別にそんなこと思ってない」
「え?」
「夢を夢のまま終わらせるのか夢を現実にするのかは、紗菜次第だろ? 夢を現実にするための努力をすれば、完全には叶わなくても誰でも夢に近づくことはできる。だから夢だと簡単に諦めて、努力する前から限界を決めるような真似はするな。紗菜にとって大事な夢だろ」
彼の言葉が私の胸に鋭く突き刺さる。
いつも私の夢物語を興味なさそうに聞く航くんが、まさかこんなふうに思っているなんて思わなかった。
私はいつも叶えばいいなと空想するだけで現実にするために行動したことはほとんどないけれど、それは諦めているからというわけではなく、ロマンチックなことを考えるだけで楽しいからだ。
もちろん現実にできればいいとは思っても、そう簡単にいかないこともわかっているから夢見るだけで終わってしまう。
でも現実主義の航くんにかかれば、違った考え方になるんだ。
私の考え方と航くんの考え方との差に感動していると、彼の手が私の頭に乗った。
「ひゃっ?」
「わかったな」
「う、うん」
思わず頷くと、航くんは満足げに「よし」と言い、再び空間の中を見渡しながらゆっくりと歩き始めた。
私も彼の後に続いて次の水槽に移動し、なぜか高鳴る心臓の鼓動を感じながら鮮やかな輝きを覗き込む。
昔から航くんとは性格が合わないと思っていたけれど、実は私が知らないだけでわかり合えるような部分もあるのかもしれない。
せっかく幼なじみだし彼とは仲良くしたいという気持ちは少なからずあったし、少しずつでもわかり合っていくことができればもっと楽しく過ごせるのかな。
そんな期待をしながら、私はアートアクアリウムの空間を思う存分楽しんだ。