再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
企画営業部のオフィスの前に到着し、心臓を高鳴らせながらその扉を開ける。
照明の明るさも種類も以前いた経理課のオフィスとは変わらないはずなのに、今私の目に映るオフィスはなんだかキラキラしているように感じる。
いよいよ希望していた仕事ができるのだと改めて実感し、嬉しさで緩みそうになる顔と気持ちを引き締めて、私は背筋を伸ばしてオフィスに足を踏み入れた。
すれ違う人に挨拶をしながらまずは部長のもとへ向かい、今日からお世話になることを挨拶する。
そして部長以外に関しては、企画営業部全体への挨拶を先日済ませていることもあり、デスクの近くの人を中心に軽く挨拶をするくらいにしておいた。
フランクに話しかけてくれる周りの人たちと会話をしているうちに業務時間となり、私は先週の金曜日の夕方に運びこんでおいた荷物を整理し始めた。
仕事しやすく整頓する中、隣のデスクが気になり視線を移す。
そこの住人である“瀬戸(せと)さん”の姿はまだない。
いつ姿を現すのだろうかとそわそわしながらおおよそ片付け終えたとき、私の同期である光石瑠花(みついしるか)が話しかけてきた。
「紗菜美(さなみ)、おはよう!」
「瑠花、おはよう。今日からよろしくね」
「こちらこそよろしく。どう? 片付けは終わった?」
「うん。いつでも仕事どうぞ!ってくらいには終わったよ」
「ほんと? それは頼もしいじゃない。私も紗菜美と一緒に仕事ができるの楽しみにしてたの。最初のうちはわからないことが多いだろうけど、アシスタントの仕事のことなら先輩だから、なんでも聞いて」
「うん。ありがとう」
瑠花は160センチに届かない私よりも10センチほど背の高いスレンダー美人で、企画営業部長の話ではアシスタントの中でのエース的存在だという。
新しい場所で新しい仕事をしていくことに不安がある半面、頼りになる同期がいてくれるのは心強い。