再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
瑠花の視線が私の隣のデスクを向く。


「紗菜美がメインでサポートする人、海外事業部から戻ってきた瀬戸さんに決まったって話はもう聞いた?」

「あ、うん。聞いたよ」

「私も瀬戸さんのことはほとんど知らないんだけど、今までも結構大きい案件を手がけてきてるみたいで、結構やり手なんだって」

「そうなんだね……」


瑠花の話を聞きながら、朝一で部長に挨拶に行ったときに聞いた話を思い出す。

そのとき、私がメインでサポートするのは“瀬戸さん”だと聞かされた。

……“瀬戸”は翼くんの名字だ。

彼の名前を聞いた瞬間、この再会は本当に運命かもしれないと思った。

もちろん第一に仕事はあるものの、初恋の人をそばで支えることができる上、プライベートでも何かが起こる予感をさせる恋愛ドラマのような再会を遂げたのだ。

翼くんって彼女はいたりするのかな……? 結婚はしてる?

彼ほどの人に相手がいないなんて思えないけれど、どちらもNOだったらいいのにと期待してしまう。

私は彼氏だけでなく好きな人すら数年おらず完全にフリーで、ここ数年は周りの友達が結婚したり、出産したりという状況が続いている。

だから、この運命的な再会に期待してしまうのは当然のことで、彼が仕事ができるという理想通りのカッコよさも私の気持ちを高揚させる要因だ。


「海外ではどんなふうに仕事してたかわからないけど、瀬戸さんのやり方に合わせられるように伸びしろのある紗菜美をアシスタントにつけることになったのかもしれないね」

「あ、なるほど……」


部長からも彼の仕事の評価を聞いていて、そのときはさすがに私にアシスタントが務まるか不安な気持ちになってしまった。

でも瑠花の言う通り、すでに自分のやり方がある人よりも何も知らない私のほうが柔軟に新しいことが身につきやすいという理由なら、納得もできる。


「紗菜美ならきっと大丈夫だよ。私もいつでも相談に乗るから。瀬戸さん、すでにいくつか案件を担当することになってるみたいだから、作業するときにはいろいろ教えるね」

「ありがとう、瑠花」

「うん。あ、瀬戸さん戻ってきたみたい。じゃあ、私も仕事に戻るね」

「うん。様子見に来てくれて、ありがとう」


「頑張って」と言いながら去っていく瑠花の後姿から目線を動かすと、私のデスクに近づいてくる“瀬戸さん”と目が合い、期待通りの状況に心臓が跳ねた。

彼も驚いたような表情を浮かべていて、おそらく自分のアシスタントに私がつくことを聞いていなかったのだろう。

だから、さっき廊下で会ったときにも驚いていたのだ。
 
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