再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
航くんを見つめながらそんなことを考え込んでいると、航くんの目線が私に向く。
その表情にはさっきまで見せていた笑みは浮かんでいない。
「梶原さん」
「は、はいっ」
「さっきから視線が痛いんだけど、何か聞きたいことでもある?」
「っ!」
自分の視線に気づかれていたことを知り、私は慌てた。
すぐに手元にあった資料を手に取って、デスクの上で揃えて平静を装う。
「別に、なんでもありません」
「本当に?」
「本当ですから、気になさらないでください」
「ふーん。なんでもないって感じじゃなかったけど?」
「本当に大丈夫ですから」
何度もしつこく聞いてくる航くんから逃げようと、私は仕事をする素振りをしてパソコンに向かい直す。
すると彼はまだ諦めていないのか、私にイスを近づけてきた。
「な、なんですか?」
航くんから逃げるために身体を引こうとするけれど、私の座るイスのひじ掛けを捕らえられていて、私は動くことができない。
そして、もう片方の手で私のデスクの上にあった資料をトントンと指を差してあたかも仕事の話をしているように振る舞いながら、彼は私の顔を覗き込んできた。