再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
そんな日々が続くある金曜日、企画営業部で私や航くん、そして今年入社した新人の歓迎会が行われた。
私たちのための会なのだからと同僚たちに真ん中辺りの席に促され、私は航くんと隣同士で座ることになった。
向かいにはまだまだ初々しい雰囲気の新人の男の子3人が少し緊張した様子で笑顔を浮かべて座っている。
会が始まり、みんなは待ってましたと言わんばかりにお酒を飲み食事をしながらおしゃべりを始めた。
私たち新入りの近くには部長がいて、部長の弾丸トークに相槌を打ちながら会話を弾ませる。
部長の話はおもしろく、仕事のことから最近増えたというお孫さんのことまで、いろいろな話をして盛り上げてくれる。
最初こそは隣に航くんがいることに気まずさを感じていたけれど、お酒が進むにつれてそれもなくなっていった。
「梶原さん、おいしそうに飲むね」
「はい、お酒大好きなんです」
「いいね~。今日は梶原さんが主役だからたくさん飲んでよ!」
「はい、ありがとうございます」
私はそれなりに飲めるほうで、上司にすすめられるままお酒を飲んでいた。
どうせなら思いっきり酔っていろいろなことを忘れてしまいたいと思うけれど、そうもいかない。
せっかくの休みが二日酔いで潰れるのは嫌だし、記憶をなくしてしまえば余計なことを言ってしまいそうで怖いのだ。
変な酔い方をしないように気をつけようと思っていると、横から軽く肘をぶつけられた。
顔を向けると航くんが私を見ていて、思わず肩を震わせてしまった。
「そんなに飲んで大丈夫か?」
「あ、はい……」
「部長、飲ませ上手だから、無理するなよ」
耳元で低く放たれた声がいつもよりも優しく甘く聞こえたのは、気遣うような言葉だったからだろうか。
胸がきゅっと締めつけられる感覚がしながら、私は小さく頷いた。