再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
周りから視線が集まり、我に返った私は咄嗟に笑って謝った。
「あっ、すみません」
「やだ、そんなに驚かなくてもいいのに! 瀬戸くんのアシスタント、うまくやってる?」
「はい。だいぶ慣れてきましたし、いろんな案件の内容とか照明のカタログを細かく見れるのは想像もできて楽しいです。つい入り込み過ぎて指摘されることもありますけど……。何よりもアシスタントでも案件の一部になれてると思えるからやりがいもあります」
「梶原さん、案件の内容も見てるの?」
「え? 見てますけど……見てないんですか?」
訊ねると、瑠花を含め、大まかには知っていても細かく内容を見せてもらっている人はいなかった。
アシスタントの仕事はついている人によって多少の違いはあっても、同じように進めるものだと思っていたから私も驚いてしまった。
……そうだ。航くんはチームでひとつのものを作り上げるんだと言っていた。
アシスタントもいなくてはならない大切な存在なのだと。
その思いが私への仕事の振り方にもちゃんと表れているんだ。
「アシスタントって基本的には見積もりと発注の繰り返しだし、もちろんアシスタントである自分がいなければ回らないだろうなって思うことはあっても、たまに誰にでもできるんじゃないかって存在意義を考えることがあるのよね」
先輩の言葉に、「わかります」と瑠花が頷く。
「でも、瀬戸くんはそう思わせないようにしてくれてるのかもね。梶原さんいつも忙しそうにしてるなって思ってたけど、少し羨ましい。私も今度頼んでみようかな」
「私もその辺り、気をつけよう。作業量増えるし必要な情報しか回してなかったけど、やっぱり内容を見れたほうが楽しいよね」
企画の仕事をしている先輩もアシスタントをしている先輩も頷き、議論を始めた。
航くんは仕事に関しても周りから見ても完璧なのだと思いながら聞いていると、隣に座っていた瑠花が小声で話しかけてくる。
「なんだ、紗菜美、瀬戸さんとうまくやってるんじゃない。安心したよ」
「……う、うん」
少し誇らしく思う反面、仕事をしていてもふとしたときに私情を持ち込みそうになる自分を恥ずかしく思う。
いい仕事をさせてもらっているのだから、しっかり務めなければいけない。