再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「でも、本当に彼、カッコいいわよね。仕事ができるだけじゃなくて周りにも気を配れるって大切じゃない? 瀬戸くん、そういうところも完璧だもの。さっきも私たちと梶原さんが話せるようにって、部長を連れていってくれたみたいだし」
「あっ、やっぱりそうだったんだ! 気が利くな~って思ってたの」
先輩たちの話に、私は目を丸くしてしまう。
ただ移動しただけだと思っていたのに、航くんがそんな気配りをしてくれていたなんて思ってもみなかった。
「企画アシスタントに関わらず、梶原さんの位置に羨ましいと思ってる人、多いと思うよ。よく他の部署の子がそんなふうに言ってるのを聞くし。梶原さん、意識しちゃわない?」
「い、いえ、仕事ですし……」
「そうなの? 私だったら、仕事とはいえやっぱり意識しちゃうなぁ。だってもし彼女になれたら、たっぷり愛してくれそうだし。いいなぁ」
「やだ、もしかして狙ってるの?」
「うーん、憧れてる、ってことにしとく! ほら一応、私、彼氏いるし?」
「やだ、一応なの?」
楽しげに話す先輩たちの会話を聞きながら、改めて航くんの人気ぶりを知る。
同じオフィスで働く人たちに好印象を与える航くんはやっぱりデキル男で、今は航くんとの距離が離れているからか、彼女たちの言っていることが少しわかるような気がする。
私だって昔から航くんの全てを否定しているわけではないし、ちゃんと認めているところもあるけれど、彼に理由もわからず振り回されることが多いのも事実だ。
ふと航くんに視線を移すと彼は笑顔で部長の相手をしていて、部長もご機嫌な様子で話を繰り広げている。
航くんが心からの笑顔を私に向けてくれたのはいつだったかなと思うと、少し寂しくなった。
「紗菜美?」
「あっ、うん」
瑠花に名前を呼ばれ、女子トークに戻る。
いつの間にか航くんの話は終わっていて、先輩の子どもの話や今流行している話題に移っていた。
そんな中、料理の合間には枝豆をもくもくと食べ続けていた私に、「枝豆、私ももらっていい? 二日酔いとか悪酔いの予防にいいのよね」と先輩が声をかけてきた。
偶然かもしれないけれど、もしかして航くんはそのことを知っていて枝豆を勧めてくれたのだろうか。
それならそうと言ってくれればいいのにと、また不器用さを垣間見せた彼に対して、私は頬を軽く緩ませた。
そうして時間はあっという間に過ぎていき、歓迎会はお開きとなった。