再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 

繁華街から10分ほど歩いた場所にあるバス停でバスを待つ。

金曜日ともあって、終バスの時間が近くなってもバスを待つ人は多い。

周りには楽しそうに会話している声が溢れているのに、私と航くんとの間に会話はなく、私たちだけ違う空間にいるようだ。

航くんはそっぽを向いていて話しかけづらい雰囲気が出ているものの、さっき彼が口にした言葉でどうしても気になることがあり、私は窺うように口を開く。


「ねぇ、航くんってどこに住んでるの?」

「なんで?」

「ほら、さっき同じ方向って言ってたから、近いのかなって思って」

「そう。同じ方向」

「……そっか。そうなんだね」


詳しくは聞いてほしくないのか、航くんはそっけなく答えるだけだ。

もう少しおしゃべりしたいと思ったけれど、私もそれ以上は何も聞かなかった。

待つこと10分。バスが到着して乗り込むと、後ろからも次々と乗り込んできた。

たくさんの人で溢れる中、航くんは「こっち」と手すりのそばに導いてくれ、バスのブレーキでふらつきそうになったときは支えてくれた。

航くんのそっけない態度とやさしい行動がちぐはぐで、彼が何を考えているのかわからなくて、私はただ「ありがとう」と言うことしかできなかった。

この前までなら周りの人たちみたいに笑いながら会話もしていたはずなのに、今はそれがないことが寂しくて、胸が痛むように感じることばかりで……少し泣きそうだった。
 
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