再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
定時になり、今日の予定作業を終わらせた私は、デスクの脇に置いている案件資料に向き合った。
これは企画営業部に来てから仕分けしていた資料で、確認が終わったものから少しずつ資料室へ移動させようと思っていたのだ。
最近は書類作りの依頼が多くなかなか確認する時間が取れないけれど、試行錯誤しながら効率よく作業を進めて時間を作るようにして、ようやく運べるくらいまで確認を終えた。
「よし。いざっ」
資料を両腕で持ち上げると量の割に意外と重さがあり、身体がふらついた。
踏ん張ろうとしたとき、私の背中が何かとぶつかった。
「何やってんの」
「あっ、お疲れ様です、瀬戸さん。すみません、資料を運ぼうと思って。ちょっと席はずしますね」
「よいしょ」と言いながら身体を方向転換してオフィスの入り口に向かおうとしたとき、ふと腕が軽くなった。
私に影を落とす方向を見ると、航くんが私の腕の中にあったほとんどの資料を軽々と手にして、呆れた表情で立っている。
「あの、何か……」
「アホ。どうして一人で運ぼうとしてるんだよ。俺がいるんだから、俺を頼れ。持っていくのはこれだけか?」
「あ、はい……」
まさか手伝ってくれるとは思わなくて呆然としていると、航くんは私に構わずオフィスのドアに向かって歩き始めていて、私は慌てて彼の後を追いかけた。