再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 

オシャレな照明が照らす廊下を歩く。

いつ見ても素敵なデザインの照明だなと思いながら斜め前を歩く航くんの背中越しにある照明を見ていると、ついこの前、経理課の後輩に教えてもらったことを思い出した。


「瀬戸さん、廊下の照明って数年ごとに変わるって知ってました?」

「知ってる。今年変わったよな」


私の問いかけに、航くんは目線とともに答えてくれる。


「あ、知ってたんですね。今年変わったのもすごくオシャレでいいですよね。朝から背筋が伸びるような素敵なデザインで。でも実は私、前のほうが好みなんです。朝と夕方で雰囲気が変化しているように見えたり気持ちによっても見え方が変わったりするのに、いつもそこにいてくれるっていう安心感があったから」

「ふーん」


航くんは斜め上に目線を移し、照明をじっと見つめる。

その表情は仕事のことを考えているときのものだ。

今まで考えたことはなかったけれど、もしかして廊下の照明も企画営業部がプランニングしているのかな。


「もしかして、この照明って企画営業部の誰かが考えてるんですかね?」

「普通に考えたらそうだろうな」

「えっ、もしかして、これ瀬戸さんだったりします?」

「いや、これは俺じゃない」

「そうですか。うーん、それなら……」


照明を見ながら企画営業部の人の名前を連ねていくけれど、航くんも今年誰が担当したかはまだ知らないようで、キリがないと気づいた私は名前を言うのをやめた。

後で誰かに教えてもらおう。


「誰が考えてたとしても、照明を数年ごとに変えることもデザイン性もうちのこだわりが見えて、なんか誇らしいです。古い照明も廃棄じゃなくてどこかに寄付するんですよね? そういうところも照明への愛が詰まってますよね」

「あぁ、そうだな」


廊下の照明の話に花を咲かせている間に、あっという間に同じフロアの奥にある資料室に到着した。

重い資料で両手が塞がっている航くんにドアを開けてもらうのも悪いと思い、私は少し歩く速度を上げて彼よりも先に資料室の前に行き、ドアを開けた。
 
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