再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
ドラマなんかで見る会社の資料室と言えば、棚と資料が並ぶだけの無機質で薄暗いイメージが強い。
それはそれでいろいろな妄想が膨らむけれど、うちの会社の資料室はそんなイメージを払拭するもので、木の暖かみのある棚と目に優しい暖色の照明があり、少しオシャレな図書館といった雰囲気を持つ。
廊下もそうだけれど社内にはあらゆるところにこだわりが見えて、そこもうちの会社で働くことを誇らしく思う理由のひとつだ。
棚の近くにあるデスクの上に、運んできた資料を置く。
「瀬戸さん、ありがとうございました。助かりました。後は私が作業しますので、先に戻ってください」
「いや、ちょうど確認したい資料があったし残る」
「そうですか、わかりました。じゃあ、出るときに声かけますね」
「ん。了解」
航くんが部屋の奥に入っていくのを見送りながら、私はデスクに置いてあるパソコンに向かう。
資料室に置いてある資料はパソコンで管理するようになっており、資料の内容を入力しておく必要がある。
持ってきた資料の数がそんなに多くないこともあり10分ほどで入力作業を終え、私は資料を腕に抱えて棚に向かった。
案件資料は日付ごとに並んでおり、同じようにひとつずつ棚に収めていく。
海外の案件を日本の資料室に置いておくと聞いたときには普通は現地に置いておくものではないかと思ったけれど、海外事業部ではデジタルデータがあれば問題ないらしく、この本社に全ての案件資料が集められているという。
最後の資料を入れ終えたとき、すぐ横にあった宝石店の改装の案件資料が目についた。
興味を引かれて手に取って中を見てみると、うちのホームページでも紹介されている案件だった。
その空間はすごく素敵なもので、画像を見たときには人が写っていないにも関わらず、結婚を決めたカップルやプロポーズを心に決めた男性が指輪を選んでいる光景が目に浮かんだものだ。
私もいつかこんな素敵な場所で一生を一緒に過ごしていくパートナーと指輪を選びたいなと思いながら、資料を元の位置に戻し息をつく。
こんなふうにこれからの人生を決めたりスタートさせるような空間を作るプランナーは、本当に素敵な職業だ。
そして、そんな素敵な案件資料がこの部屋にたくさん眠っていると思えば、気持ちが高揚した。