再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
資料の数に感心しながら部屋の奥に進むと、航くんの背中が見えた。

すぐにでも彼と話したいと思っていたはずなのに、その瞬間、まるで透明な壁にぶつかるように私は立ち止まってしまった。

……やっぱり航くんって黙っていれば絵になるよなぁ……。

資料に目線を落としながらも彼の背筋は伸びていて姿勢もいいし、まさにデキル男のオーラが出ている。

高校のときに水泳部で培ったらしい細すぎないその体格は、頼もしさも感じる。

とはいっても、今の航くんは資料を見ることに夢中になっていて、私の視線には気づいていない。

無防備な彼の大きな背中に抱きついたら、航くんはどんな反応をするのかな。

きっと驚くだろうなと思うと、小さく笑みがこぼれた。

私が彼の背中に抱きついた姿が頭に浮かんだのをきっかけに私の妄想スイッチが入り、死角の多い部屋で男女が繰り広げる胸キュンなシーンが次々と浮かんできて、思わずにやけてしまう。

届かない場所にある本に手を伸ばしたとき、ふたりの手が触れ合って見つめ合ったり……ひとつの資料を見ながら、その近さと感じる吐息や熱にドキドキしたり……。

ふたりが本棚の陰に隠れながら抱きしめ合って、キスをしたり……。

そんな胸を甘く締めつけるような想像がリアルに感じた瞬間、私は我に返った。

やだ、どうして想像の中の私の相手が航くんなの……!?
 
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