再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
慌てて首を振って、頭に浮かぶ映像を打ち消そうとするけれど、リアルに近いせいかなかなか消えてくれない。
「おい、何してるんだよ」
「へっ!?」
突然耳に飛び込んできた声に顔を上げるといつの間にか航くんが目の前に立っていて、私は咄嗟に身を引いた。
でも首を振っていたせいで目の前が眩んで、ふらついてしまう。
「ひゃっ……!」
「紗菜っ!」
私の身体に強い力がかかり、航くんの胸の中に閉じ込められる。
その瞬間、耳元に安堵したような彼の吐息がかかり、私は思わず肩を震わせてしまった。
「バカ、何してるんだよ」
「……ご、ごめん。ありがとう、航くん……」
冷たい口調に反して、私を包み込む腕はあたたかい。
不思議と安心感を覚えて彼の腕を掴んだとき、私の身体が彼の手によって向きを変えられた。
そのまま本棚の壁に、背中と手を押しつけられる。
「ひゃっ……」
ハッと顔を上げると航くんがまっすぐ私を見下ろしている。
つい少し前まで空想を繰り広げていたからか彼の表情が妙に魅惑的に思えて、思わず見つめてしまう。
すると航くんは意地悪な笑みを浮かべた。
「あれ、拒否しないんだ?」
「し、します! ふざけてないで、離して」
「別にふざけてないけど? 引いた後には押せってこういうことだろ?」
「や、意味わかんな……っ、ちょっ、航く……っ」
航くんの顔が近づいてくるけれど、私は金縛りにあったように動くことができない。
航くんは一体何を考えているの? また私をからかっているだけ? それとも何か意味がある?
……このまま彼に触れられれば、その答えはわかる?
ほんの少しでも彼のことを理解できるようになる?