再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 


航くんと資料室に行った日から、私は普通に振る舞うことに必死だった。

というのも、航くんと目が合うと変に意識してしまうのだ。

一方、航くんの態度は特に何も変わっていない。

意識しているのは私だけのようで、そのことが彼にバレないようになんとか感情を隠して毎日を過ごしていた。


そして、太陽の光と青空に包まれて爽やかな緑が風に揺れる、ある木曜日。

見積書を作成するための資料を航くんから手渡された。

いつもは資料を受け取るとすぐにデスクに戻って確認作業に入るけれど、今日は身体が固まったように資料に釘付けだった。

……パズルのピースがピッタリはまる、とはこういうことを言うのかもしれない。

デスクに戻らない私を不思議に思ったのか、航くんが顔を覗き込んでくる。


「梶原さん、どうかしたか?」

「あっ、いえ。今回はブライダルの改装の案件なんですね。すぐに確認します」

「よろしく」


平静を装ってデスクに戻り、記憶のパズルを組み合わせながら資料の確認を始める。

資料には結婚式場のチャペルの設計図や照明のカタログ、案件コンセプトなどがあり、内容を頭に吸収させながら完成図を想像していく。

そしてその想像の中に、この部署に来てすぐの頃に見た新郎新婦の姿や列席者の姿を当てはめてみた。

もちろん資料を見るだけでは、実際に目にした光景には勝てないし想像でしかない。

それでもこの案件は素晴らしいと思えて、この部署に来てから目にした案件の中でも一番気持ちが高ぶるものだった。

いてもたってもいられず、私はパソコンに向かう航くんの方を向いて興奮しながら声をかける。


「瀬戸さん、このプラン、すごく素敵です!」


その興奮の声に顔を向けた航くんは、驚いたように目を丸くする。

でもすぐに仕事のときに見せる真面目な表情に戻り、私の方に身体を向けて聞く体勢を作った。


「そう。具体的に聞かせてもらえるか」


そう聞かれた途端、私は想いを溢れさせるように語り始め、そして航くんは熱く語る私をじっと見ながら相槌を打ってくれる。

彼と目が合っていても気にならないくらい、私の興奮はやまなかった。
 
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