再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 

資料を確認し始めて30分ほどが経った。

調子が出て仕事を進めていると、少し前から席を外していた航くんが戻ってきた。


「梶原さん、ちょっといいか」

「はい」

「来週の金曜から1週間、俺いないから」

「え?」

「出張が入ることになった。その間、梶原さんには他の人の作業をメインでサポートしてもらうことになるからよろしく。しっかり勤めろよ」

「あ、はい……、承知しました」


航くんがデスクに戻る姿を横目に、私もデスクに向き直る。

……1週間、航くんと会えないんだ……。

たった1週間とはいえ、航くんと一緒に仕事ができないことに寂しさを覚えた。

慣れもあるのかもしれないけれど、航くん以外の企画営業の人から依頼される作業よりも、航くんから依頼された作業のほうが、何倍もやりがいがあるように感じている。

それは案件の内容の問題というわけではなく、航くん以外からは資料を渡されずに指定された商品の見積もりや発注だけを依頼されることが多いからだ。

とはいえ、仕事を選り好みせずに自分がやるべきことを果たすのが社会人というものだろう。

わがままは言っていられない。

そう自分に言い聞かせたとき、普段このオフィスではあまり聞くことのないヒールの音が近づいてくるのが耳に入った。
 
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