再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 


航くんのイタリア出張が決まった翌日から、航くんはオフィスにいることが少なくなった。

というのも、現場完成間近の案件と企画が大詰めになっている案件とが重なっており、クライアントや建築士の元や現場へと足を運ぶスケジュールが詰まっているからだ。

先日見積もりを出したブライダル案件も同じだ。

企画営業の仕事は、企画を作成し照明を発注して終わりというわけではない。

企画の作成では、現場に出向いたりクライアントの元で話し合いを何度も重ねたりしていく。

その後、照明の見積りや発注をかけ、現場に照明が届いてからも状況確認のために出向き、照明の明るさなど空間に合わせた調整を細かく行う。

最終的には商業施設であれば、実際に開店まで見守り、場合によってはその後の調整や依頼者の相談の対応を行う。

空間ができあがれば終わりという仕事ではなく、その先もずっと依頼者やその空間と付き合っていく仕事なのだ。

企画営業部はきらびやかな仕事をしている部署だと思っていたけれど、電話口で揉めていたり遅くまで残って企画書を作成している光景もよく見かける。

私が描いていた理想論だけで簡単にうまくいく仕事ではないことは、そういった光景をよく目にすることですぐに知った。

もちろん、航くんも例外ではない。

電話に向かって議論している姿をよく見るし、勤務時間も私たちアシスタントに比べて長い。

いつだったか見積もりを出した後に、クライアント都合で全てやり直す事態に陥ったこともあった。

それでも決して弱音は見せずに生き生きと仕事をしていて、それはやりがいや楽しさがあるからだろう。

そして、その忙しさを目の当たりにしているうちに、個人的な感情は抜きにして、アシスタントとしてもっと力になりたいと強く思うようになった。
 
< 94 / 196 >

この作品をシェア

pagetop