再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
03
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航くんがイタリアへ旅立った金曜日から、私は航くんから任された特定の照明器具の調査と見積書の作成、そして部長の指示に従って他の企画営業のアシスタント業務をおこなっていた。
今のところ特に困ることもなく、渡された仕事をこなす日々を過ごしている。
航くんとはメールで依頼された分の資料の受け渡しをするだけで、ほとんど話すことはない。
彼がイタリアでどんな仕事をしているのか気になりながらも、聞くタイミングもなく詳しいことは知らないままだ。
毎朝、住人のいない航くんのデスクを見るたびに寂しい思いが生まれ、1日が長く感じる。
晴れた日でも景色がなんとなく暗く沈んで見える。
たったの1週間いないだけなのにどうしてそんなふうに思うのだろう。
そうして航くんの姿を見なくなってから、土日を入れて今日で5日目。
彼が日本に戻ってくるまで、あと3日だ。
今日は朝から企画営業の青木さんに見積書作成を依頼され、作業を行っている。
一部調べものがあり、資料に付箋をつけようとペン立てに手を伸ばしたとき、違和感を覚えた。
「あれ?」
ペン立てに立てていたはずの、あるペンがなくなっている。
いつどうやって手に入れたかは覚えてないけれどそのペンは学生の頃からずっと使っているお気に入りで、大学受験や就職活動も験担ぎで必ず持ち歩いていたものだ。
最近は使った記憶がないし、いつから手元にないのか全くわからない。
いつか使ったときにペン立てに戻さずにその辺に置きっぱなしにしてしまったのだろうかとデスクの上やバッグの中を探すけれど、見当たらなかった。
何度か会議で持ち出したことがあるし、そのときになくしてしまったのかな……。
たかがペン1本なのにすごくショックで、しばらく仕事をしながら記憶の糸をたぐったり休憩時間に再度辺りを探したりしたけれど、思い出すことも見つけることもできなかった。
なくなってからすごく大切なものだったと気づくなんて、皮肉だなと思った。