再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 

昼休み。会社から5分ほど歩いた路地にある店で、心地いい音楽に包まれながら私は瑠花とランチをしていた。

ここは野菜をたっぷり使ったメニューが豊富で、いつ来ても女子で溢れている。

今日私が頼んだメニューは唐揚げ定食だ。

唐揚げはさっぱりした味付けで食べやすい大きさになっており、それ以外のサイドメニューもたっぷりの生野菜が入ったサラダや野菜のおひたし、煮物、大根のお味噌汁、そして五穀米と、ヘルシーな食材がオシャレな木の食器とお盆にのせられている。

視覚でも楽しめる料理はおいしそうなのに、今日はあまり気分が上がらない。


「ねぇ、紗菜美」

「うん?」


私は唐揚げを頬張りながら、視線を上げ瑠花を見る。


「噂話とか興味はないんだけど、今朝どうしても気になること聞いちゃったの」

「気になること?」

「瀬戸さんのことなんだけど……藤岡さんと婚約してるんだって」

「……ふぇっ!?」

「紗菜美、知らなかった?」


思わぬ情報に、「知らない!」と言うように私は強く首を振る。


「今回のイタリア出張ね、もちろん案件のためでもあるけど、先週末に出発したのは休日を使って結婚の準備をするためだって聞いたの。ドレスをイタリアのものにでもするのかしら。ふたりとも家具とか照明を選ぶセンスは抜群だろうし、新居の家具を買うってことも考えられるよね」


ふたりの親密な雰囲気を思い出し、心臓が重く鼓動する。

同時に胸がきつく締めつけられて、口の中のものがうまく飲み込めない。

この前、私がふたりに感じたことは間違っていなかったんだ……。

親密どころか近々結婚するような関係だった。

でも、それなら航くんは一体何を考えているの?

結婚を考えている恋人がいるにも関わらず、私をからかうためだけにキスをするなんて、彼女に対する裏切り行為だ。……酷すぎる。
 
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