私を好きに・・・
好きだったのに・・・
 2年前。私はバイト先で知り合った人が気になっていた。いつも優しくて、誰からも人気があったけれど、どことなく、冷たくて寂しい目をしているところにたまらなく惹かれた。
 「私、あなたのことが好きなの」
 飲み会の帰り、地下鉄の駅の改札で、彼に言った。飲み慣れないカクテルと、誰も居ない日曜日の終電近くの改札が、私の思いを後押しした。
 「付き合うとか好きとかそーいうのよくわかんないけど、それでよければ」
彼のよくわからない返事をもらって、私たちは何回もデートをした。彼はいつも待ち合わせ時間に正確だった。ドアがあれば、黙って開けてくれて、私が通るまで押さえていてくれた。食事や映画のお金は全部払ってくれて、私の話をよく聞いた。
 最初のうちは、義務的にそれをやっているように見えた。彼の冷たい目がそれを教える。でも、何回かデートをするうちに、彼は、私を見て、笑顔でそれをするようになった。
 デートの度に、これでいいのだろうか。彼が私に優しくすることに、なんとなく、不安な気持ちがして、そうすると、吐き気がしてたまらなくて、私は幾度となく、デート中に1人で吐いた。
 映画の途中だったり、お茶を飲んでいるときだったり。
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