【完】せんぱい、いただきます。

「めっちゃうまそう」


中から出てきたドライフルーツ。


「どうしたの?急に」



先輩はドライフルーツの入った袋を手に私を見た。



「お土産です。帰省してたんで。


 あの、これ地元のお店で見つけたので。


 先輩、ウイスキー好きじゃないですか。


 だから、調べたら、ドライフルーツとか

ウイスキーのおつまみに合うって書いてあったし」



すみません、




そう言おうと思ったのに。


「ありがとう」



そう言って、先輩は私の手を握った。



白く透けるような繊細な少し湿っている手。

爪の形は縦長で、長さは清潔な短さ。

細めの指。

小柄な身長にもかかわらず、

私よりも大きな手のひら。





先輩の冷たい手が私の手を包む。

それだけで、頭が、真っ白になってるし、

顔が熱い。



フリーズした私を見て先輩は慌てて手を放す。




でも。





先輩、耳、赤くない?



「これ、後で食べるわ。


夜、食べたいものある?」



キッチンへと続くドアに向かいながら、


強引に話題を変える先輩。



「あ、えっと…」


展開についていけず何も言えない私。




じゃあ、俺が決めるから。






そう言って、キッチンに消えていく。

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