【完】せんぱい、いただきます。





1月も2週目からは冬休みが終わって、

後期の残りの講義が始まる。





「あのさ、実紅ちゃん」





心理学の講義が終わった後、声をかけられた。




振り返ると、同じゼミの彼がいた。



「あ、えっと」



私が戸惑った表情で彼を見ていると





「あのさ、この講義のノートとってる?


もうすぐ試験じゃん?


でも、俺、この講義、


全然メモとってなくてさ」






彼は本当に照れたような困ったような表情で

私に手を合わせていた。




「いいよ」




私は一度リュックに詰めたバインダーを

取り出そうとした。





「あ、次、空いてる?


そしたら大学のカフェででも写さしてよ」





彼は、八重歯を見せて眉を下げた。





「今日は、これで講義終わりだからいいよ」




そして、もう一度リュックを背負い直し、

一緒にカフェに向かって歩き出す。

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