【完】せんぱい、いただきます。
「あのさ、
実紅ちゃんは俺の名前覚えてる?」
歩き出して彼は私に尋ねた。
「えっと」
私は言葉につまる。
彼は、6人くらいの男子のグループにいる。
そして、その中では「たっちゃん」と
呼ばれている。
それは、知っているけど、
私が「たっちゃん」と呼んでいいのか。
「俺、樹(たつき)。加藤樹。」
私が名前を知らないとでも思ったのだろう。
彼は丁寧に名前を教えてくれた。
二人並んで構内の奥にあるカフェまで歩き、
彼はブラックコーヒーを、
私はストレートティを買って、
適当に空いている席に座った。
彼は「ノートを見せてもらうから」と
私の紅茶代を出すと言ってくれたけど、
私は断った。
お金を出してもらうほど立派なノートなんて、
取ってないし。