【完】せんぱい、いただきます。
「いや、そんなに。
てか、さっきと服装違うよね?」
彼はふにゃっと笑っている。
そして、うつむく私に視線を向け、
自分の腕時計を見た。
「少し早いけど、次の電車に乗ろうか。」
「じゃあ、切符買ってくるね」
私は彼に背を向け、券売機へ向かう。
目的の駅を聞き忘れたことに気づいたのはそのあとだ。
「中央駅で降りよう」
後ろから彼の声が聞こえた。
私は小さく、ありがとう、と言い、お金を入れ、切符を買う。
「あと5分くらいで電車来るから、あっちに並ぼう」
そう言った彼に私は手を引かれ、すでにできていた列の最後尾に並ぶ。
手、つないでる…?
彼の手はかなり冷たかった。
よくみると、彼の頬も耳も赤い。
私は、彼の手が少しでも暖まればいいと思った。
でも何もできなかった。