【完】せんぱい、いただきます。


「そういえば、俺が個人的に実紅ちゃんに話しかけたのってゼミのあとだったよね」



彼は懐かしむように話題を変えた。


「えっと、白い紙を渡されたとき・・・?」


「そうそう!あれ、何だったの?」


私は答えることをなんとなくためらった。


「えっと、」

「ごめん。聞かない方がいいやつ?」

「いや、連絡先を教えてもらったの」



なんだか樹くんをみていると秘密にするのが間違っている気がして言ってしまった。


「それで、連絡とってるの?」

「あ、うん。」



彼は手を目にあて天井を仰いだ。




「なんで、あの時自分の連絡先とすり替えておかなかったんだろ」


「・・・」


「何でもない!それで、先輩とは付き合ってないの?」

「付き合ってないよ!」

「じゃあさ、また、俺とごはん食べてくれる?」

「うん」

「じゃあさ、今から俺ん家来ない?」

「え?」




「最初に言ってたじゃん。ごはん一人で食べるの嫌だって」



確かに言ったけど。


でも。


「俺、実紅ちゃんのためになんか作るし。



だからさ」



ふと、先輩の顔が浮かぶ。



「今日、何食べたい?買い物して帰ろう」



彼は腰を上げ、片付けをしている。


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