【完】せんぱい、いただきます。
顔をいったん洗うと、冷静になって、なんだか恥ずかしくなった。
やっぱりメールで
「なんでもないです。大丈夫です」
と言おうか。
鏡の中をぼーっと見ていると玄関のチャイムが鳴った。
「はい」
「実紅ちゃん、どうしたの?!」
こんなに寒いのに汗だくの先輩。
きっと電車を降りて家まで走ってくれたのだろう。
「フラれた?それとも何か失くした?嫌なことがあったとか?」
玄関でつめよる先輩。
「なんにもないんです」
「はあ?!」
「なにもないんです。でも先輩に会いたくなりました。」
「・・・はあ。それ、どういう意味?」
「先輩、カルボナーラ作ってください。」
ただでさえ大きな目をさらに大きく見開く先輩。
そしてそのままへなへなと座り込んでしまった。
「あの、大丈夫、ですか?」
「あのさ!」
顔を上げて先輩は言う。
「俺、ちょっと期待したっていうか。」